長距離移動をする際に必ず比較される新幹線と航空機だが、基本的に乗車(搭乗)時間だけで比較すれば、航空機の方が圧倒的に短くなる。しかし、航空機ならではの様々な理由から、一概に長距離移動で航空機を選ぶべきではないというは、記事をご覧の皆様もある程度は知っているのではないだろうか。今回は「永遠のライバル同士」とも言える、競合区間における新幹線と飛行機の使い分けについて、多少新幹線贔屓の評価にはなってしまうが考えてみることにする。
目次
結論から知りたい人向けに、簡単な表を準備してみた。運賃・所要時間・乗車(搭乗)時間・時間の正確さ・快適性という5点から両者を比較してみた。
評価項目/移動手段 | 新幹線 | 飛行機 |
---|---|---|
運賃 | △ | △ |
所要時間 | △ | ○ |
乗車・搭乗時間 | × | ◎ |
時間の正確さ | ◎ | × |
機内・車内の快適性 | 〇 | △ |
これを見ると、運賃はほぼ互角で、所要時間は飛行機がやや短いものの、時間の正確さには欠ける。
時間の正確さは新幹線が追随を許さず、車内の快適性(普通車・エコノミー)に関しては新幹線が多少有利。という結果になった。
新幹線や飛行機を使って遠くに旅行に出る場合、皆さん大体何らかの目的を持って出かけると思うが、その「目的」が、遅延を許せるかどうかというのが、新幹線か飛行機どちらを使うかの評価の分かれ目になると考えてもよいと思う。遅延を許せないのであれば、多少時間がかかっても新幹線で。2時間程度の遅延が発生しても許せるのであれば飛行機でといった具合だ。例えば、コンサート等の興行の場合、開始時間は決められており、途中からの入場をすることはできるが、遅れれば遅れるほど、満足感という点では低下してしまうことだろう。
これ以降はより詳しく、今回比較した内容について説明していく。
新幹線と飛行機は共に遠距離の移動に使われることが多く、東京~大阪間のようにがっつり競合している区間というのも、それなりに存在している。基本的に、同じ区間であれば、所要時間は明らかに飛行機のほうが短いため、ついつい飛行機を選びたくなるかもしれない。しかし、定時性という観点では、新幹線が圧倒的に有利だと言える。
JR東海の2020年版アニュアルレポートによると、東海道新幹線の列車1本あたりの平均遅延時間は、約0.2分である。秒に換算すれば、なんと12秒しかない。航空会社の定時運航率が概ね80~90%を占めており、しかもそれは15分以内の出発遅延を含めない数値であるため、いかに新幹線の定時性が高いかどうかが分かるだろう。
しかもこの数値、「自然災害などを含めた数値」であるということだ。もちろん、自然災害によりダイヤが大幅に乱れることはあると言えるが、裏を返せば、よほどの事(台風などの自然災害や人身事故等)がなければ、全く遅延しないと読むことができる。人身事故に関してはどうしようもないのだが、台風などの場合はある程度事前に予測をしておくことができるだろうし、そもそも台風の影響が考えられる場合には、航空便は欠航となってしまう事が往々にしてあるだろう。
2021年4月現在、新型コロナウイルスによる移動需要の減少により、新幹線も臨時列車を中心に大きく本数を減らして運転しているが、それでも東海道新幹線をはしる日中帯の「のぞみ」定期便は、概ね3~4本が確保されている。東海道は別格としたうえでも、東北新幹線や上越新幹線、北陸新幹線においても、おおよそ東京を出発する有効列車本数(後続に抜かされず最速で目的地まで到達できる列車)は1時間に1本程度確保されており、地方便では1日に数便程度しか運航されない航空機と比較すると、運転本数が多いことがいえる。このため、飛行機にありがちな「都合の良い時間に運航されていない」といった状況は少なく、必要な到着時刻から考えて柔軟に検討することができるのは、新幹線の大きな強みである。
新幹線の予約変更は、近年ではインターネット予約から簡単に列車を変更できることが多い。特に、東海道・山陽新幹線におけるエクスプレス予約では、予約変更時の手数料は一切無料で、何度でも変更をかけることができる。もともと、エクスプレス予約の利用には専用のクレジットカードが必要だったが、「スマートEX」サービスにより、手持ちの交通系IC乗車券と、クレジットカード情報を紐づけることで同様のサービスを利用できるようになった。(ただし、料金は専用クレジットカードを持つ会員の方が安価である)
また、インターネット予約以外で紙のきっぷを購入した場合でも、出発時刻までに駅に行けば、1回に限り列車の変更等が可能となっている。ただ、注意しなければならないのが、特別に安い「特別企画乗車券(特企券)」等の安価なきっぷ類を購入した場合であり、こちらは原則として列車の変更などの対応はできないことに注意したほうがよい。きっぷの券面を見てマル印に『企』や『契』と書かれたものであれば、特企券に該当する可能性があるため、注意しよう。
航空機の場合、一般的に「出発時刻の30分前まで」には、保安検査を通過しておくことが望ましいといわれる。また、近年は国内線であろうが保安検査はかなり厳しく、機内持ち込み用のカバンの中にPCやタブレット端末等が入っているのを見つけると、取り出して別途検査にかけている光景も見かける。安全のためには仕方ないのだろうが、荷物を取り出してまた収納するという行為は、はっきりいってかなりストレスになる。
しかし、新幹線の場合、改札を通過するのは極端な話、列車が出発するまでであれば良い。
航空機の場合、いくらインターネットで予約していても、空港に到着すればチェックインカウンターで航空券を発券し、保安検査を受けるという流れは変わらないので、手続きの煩わしさという面でも、新幹線が有利だろう。
新幹線の普通席の座席のシートピッチ(前後間隔)はおよそ105㎝であるが、飛行機におけるエコノミークラスのシートピッチは、およそ80㎝である。LCCであればこれより更に狭いこともあり、この25センチの差はかなり大きい。少し体を動かしたり足を組んだりすれば、前の座席に簡単にぶつかってしまうだろう。そもそも搭乗時間が短いなりの割り切りなのかもしれないが、広い空間で移動したい場合は、新幹線の座席の方がより快適である。また、運賃に少し上乗せすることで、いわゆるプレミアムエコノミーのような座席を用意している機材もあるが、必ずあるとは限らないのが実情である。
新幹線の場合、目的地付近の駅は概ね市街地にあることから、降車後の移動や目的地への移動についても、だいたいの場合スムーズに事が運ぶだろう。飛行機の場合、空港は市街地から離れた場所にあることが多く、空港へのアクセスが課題となっている。ただ、福岡空港は、ほぼ例外ともいえる好立地にあるため、福岡が目的地なのであれば、飛行機を利用した方がかなり早く到達できるだろう。
機内に乗り込み、シートベルトをしてしまえば、あとは目的地まで一直線。名古屋からだと、仙台や福岡であればおよそ1時間程度、新千歳でも1時間半程度と、あっという間に目的地に到着できる。これがありがたいのは、特に赤ちゃん連れの方ではないだろうか。子どもを連れて旅行したことがある方はわかるかもしれないが、小さい子というのはとにかく同じ場所でじっとしていることができないものだ。言うことをなかなか聞いてくれない乳幼児をあやしながら、新幹線であれば何時間も密室に拘束されることになるが、それはまさに地獄である。そういったときに、長くても2時間程度我慢すれば、大体のケースで目的地の空港に到着できる飛行機はありがたい存在だ。
飛行機を使っていて思うのが、正直遅延が多いということである。空港にいると、よく出発時間の変更のアナウンスがかかっているが、飛行機は毎日、どのような経路で飛行するかが決まっているため、例えば運用後の検査で不備があった場合、再点検しなければならない。このように、機材のやりくりがつかなくなった時に遅延(最悪の場合は欠航)するのだが、30分~40分程度の遅延はよくあるものとして考えるべきである。
ここまで多少新幹線びいきで書いてきたように思うが、新幹線と飛行機の使い分けは、必ずこうであるというものではなく、状況によって正しく使い分けるというのが、回答になるだろう。例えば、飛行機であれば昼間の中途半端な時間(11時~15時台くらい)は売れ行きが悪いのか、28日前までに買えば、新幹線を凌ぐ安い価格で購入することもできるし、LCCキャリアを使うということであれば、より安く飛行機の予約を取ることも可能になってくるだろう。逆にJRは、直前でも定価はいつもと変わらないので、仮に予定を変更したくなり、別の列車にする場合でも、原則としては指定した列車が発車する直前まで受け付けてくれるところが安心材料である。
ここまで書いてきたことを参考に、まずは旅行の目的を改めて考え、最適な交通機関をチョイスしてほしい。