新型コロナウイルス感染症の拡大により停滞している日本国内の旅行需要の喚起するために、「GoToトラベル」に代わって「全国旅行支援」が始まる予定だ。かつての「GoTo」とは何が違うのか?どのような割引補助を受けられるのか?について解説する。
目次
「全国旅行支援」はいつ開始されるのか?
9月22日、NYを訪問中の岸田総理が記者会見を行い、9月中に開始で調整されていた「県民割」に替わる新たな旅行需要喚起の施策「全国旅行支援(全国旅行割)」を10月11日より開始することを表明した。
その後9月26日、観光庁より改めて「全国旅行支援の開始」が正式にアナウンスされた。岸田総理の会見では、「全国旅行割」という言葉で紹介されていたので、当初の「全国旅行支援」とは異なる枠組みの制度になる可能性もあったが、観光庁が「全国旅行支援」として発表したため、7月から開始する予定だった枠組みで実施される模様だ。
7月から新型コロナウイルスの感染拡大が顕著となり、急遽見送りとなった全国旅行支援であるが、ここに来て感染拡大の速度が落ちてきており、ピークを越えたと判断したものとみられる。
参考 「全国旅行支援」は12月下旬まで 年末年始は対象外の見通し朝日新聞デジタル
「県民割」が「全国旅行支援」として全国拡大へ
現在はブロック単位で近隣県への旅行を補助する「県民割」が10月11日から全国を対象に拡大されるとともに「全国旅行支援」として制度が変更され、新幹線など公共交通機関利用の旅行商品を利用する場合に、1人当たりの補助金額を最大3,000円引き上げる。
9月26日に公開された観光庁の報道発表資料(別紙)には、次のように記載がある。これは6月に発表されていた内容から変更はない。
全国を対象とした観光需要喚起策
国の支援事業として、支援水準は、以下のとおり全国一律とする。
<割引率>
40%
<割引上限額>
交通付旅行商品 :8,000円(一泊当たり)(鉄道、バス、航空など)
上記以外:5,000円
<クーポン券>
平日:3,000円
休日:1,000円
観光庁報道発表(別紙) 全国を対象とした観光需要喚起策の実施について
本記事では、これを踏まえ、具体的な取り扱いがどのようになるのかを紹介することとする。なお、公式に発表されている情報は観光庁からの情報しかないので、今後、実施に当たり具体的な運用が発表された場合は、随時本記事に追記していく。
近隣県であればともかく、全国を対象にするのであれば、公共交通機関の利用料金も高額となるため、補助が出るのは旅行者にとってありがたいことだろう。
県民割はこれまで「宿泊費の50%、最大5,000円」を補助したうえで、旅行先で利用できる最大2000円のクーポン券を配布していたが、全国拡大を機に、1人当たりの補助金額が「宿泊費の40%、最大5000円」となり、かつ新幹線や航空機などを利用した旅行商品の場合、「交通費を含めた旅行代金の40%、最大8000円」となる。
また、旅行先で利用できるクーポン券は、これまではどの曜日でも最大2000円となっていたが、今回の変更により、休日は1000円に引き下げられるが、平日は逆に3000円に引き上げられ、平日の旅行需要の喚起に力を入れている。
10月11日から始まる全国旅行支援の補助金額については以下の表のとおりである。
GoToトラベルは、国が実施の可否を決定し、期間中は全国一斉に事業が行われる。しかし、全国旅行支援はあくまで県民割の延長線上にあるため、実施の可否については各都道府県の判断に委ねられている。
仮に、事業による補助を希望しない都道府県があれば、その都道府県は事業の対象とならず割引を受けることもできない。
観光庁より、実施期間は12月下旬までという発表があった。10月11日より開始して12月下旬までなので、およそ2か月程度実施されることになる。また、12月下旬という表現は、年末年始の繁忙期は対象外になることを表しているものと考えられる。
新幹線などを利用した旅行商品は新たな「県民割(全国旅行支援)」で割引の対象に
今回の県民割(全国旅行支援)は、Gotoと同じく、旅行会社を通じて対象となる旅行商品を購入した場合、その金額に応じて1人当たり最大8,000円の補助金を受けることができる。
ただし、旅行代金の40%が上限なので、1人当たりの旅行代金が新幹線料金を含めて20,000円を超える場合でなければ、満額8,000円の補助金は出ないので注意が必要だ。
10月からの補助金の増額は、実質的に公共交通利用の場合の補助金となり、以前のGoToの制度設計にやや近づいてきた感がある。
新幹線のみの利用は補助の対象となるのか?
GoToの時から変わらないが、新幹線だけの利用に対して補助金が適用されることはない。
Gotoや県民割は、旅行先でお金を使って地域を活性化させることが目的なので、単に交通費の補助にしかならない利用に対しては、補助金が支給されることはないだろう。
新幹線を利用して私用の旅行を計画している場合は、旅行会社の旅行商品の中でも、宿と新幹線だけがパックされた商品を選べば問題ないだろう。このような商品はGoToの際にも補助金の対象となっていたので、今回の「全国旅行支援」についても同様に利用できると思われる。旅行会社で購入できる商品が添乗員つきのツアーしかないというわけではないので安心だ。
詳しくは旅行会社のサイトなどから確認してみてほしい。
割引の具体的な例について
このケースでは、割引補助を受けられる。
例えば、宿泊&新幹線込みの旅行代金が一人あたり2万5千円の場合、以下の補助を受けられる。
・旅行代金:25,000円×40% ⇒8,000円割引(最大額)
※25,000円の40%は10,000円だが、公共交通を含む商品の補助上限が8,000円のため。
・旅行先で利用できるクーポン券 ⇒平日3,000円、休日1,000円
⇒総額で一人あたり最大11,000円の補助!
このケースでは、割引補助を受けられる。
例えば、宿泊料金が一人あたり1万5千円の場合、以下の補助を受けられる。
・旅行代金:15,000円×40% ⇒5,000円割引(最大額)
※15,000円の40%は6,000円だが、公共交通を含まない商品の補助上限が5,000円のため。
・旅行先で利用できるクーポン券 ⇒平日3,000円、休日1,000円
⇒総額で一人あたり最大8,000円の補助!
このケースでは、割引補助を受けられる。
例えば、日帰り旅行の料金が一人あたり1万5千円の場合、以下の補助を受けられる。
・旅行代金:15,000円×40% ⇒6,000円割引
・旅行先で利用できるクーポン券 ⇒平日3,000円、休日1,000円
⇒総額で一人あたり最大9,000円の補助!
このケースでは、割引補助を受けられない。
例えば、「ぷらっとこだま」等の旅行商品で、必ずしも現地での観光を目的としない、実質交通費のみの旅行商品は、Go To トラベル事業の時と同じく、割引補助の対象外となる。
このケースでは、割引補助を受けられない。
ただし、この場合はあくまで「全国旅行支援」による補助を受けられないだけであり、新幹線を運行するJR各社が、全国旅行支援にあわせて独自に割安なきっぷを発売することはあり得る。
このケースでは、宿泊予約分に関して、対象となる宿泊施設であれば割引補助を受けられる。
例えば、宿泊料金が1万5千円、新幹線料金が1万円の場合、以下の補助を受けられる。
・宿泊代金:15,000円×40% ⇒5,000円割引
※15,000円の40%は6,000円だが、公共交通を含まない商品の補助上限が5,000円のため。
・新幹線料金:10,000円(割引なし)
・旅行先で利用できるクーポン券 ⇒平日3,000円、休日1,000円
⇒総額で一人あたり最大8,000円の補助!
このケースでは、宿泊予約分に関して、対象となる宿泊施設であれば割引補助を受けられる。
例えば、宿泊料金が1万5千円の場合、以下の補助を受けられる。
・宿泊代金:15,000円×40% ⇒5,000円割引
※15,000円の40%は6,000円だが、公共交通を含まない商品の補助上限が5,000円のため。
・旅行先で利用できるクーポン券 ⇒平日3,000円、休日1,000円
⇒総額で一人あたり最大8,000円の補助!
旅行に行って落ち込んだ地域の活性化に貢献しよう!
新型コロナウイルス感染症の拡大から3年。一時期に比べれば随分と移動はしやすい環境となっているのだが、旅行者の数としては未だに大幅に減ったままだろう。
2022年時点でも、繁忙期の新幹線が特定の時間を除いては取りやすい状況が続いており、コロナ前のそれとは比較にならないくらい、陸運・空運等の旅客輸送業や観光業界は大きな打撃を受け続けている。
全国旅行支援は、GoToに続いてこれら打撃を受け続けている箇所を支援しつつ、旅行者自身はお得に旅行に行くことができるチャンスとなるので、ぜひこの機会に活用し、地方観光業の支援をしつつ、久々の旅行に出てはいかがだろうか。