山陽新幹線を駆ける個性的な「ひかり」たち(下り博多方面編)【ひかり号の雑学②】

山陽新幹線の主役は時代とともに移り変わり、開業当初のそれは「ひかり」だったが、平成初期の「のぞみ」誕生により主役を譲った。

ただ、九州新幹線の開業前の山陽新幹線は、ひかりレールスターと呼ばれる速達型のひかり号が、毎時1本ないし2本、新大阪から博多までを往復しており、レールスターという称号が与えられているものの、ひかり号という種別は第一線で活躍をしている列車だった。それが、2011年の九州新幹線の開業に伴い、ひかりレールスターは徐々に「みずほ」や「さくら」といった九州直通の種別に置き換えられていき、数を減らしていった。

現在では、かつて「ひかりレールスター」が使っていたスジは全て「みずほ」「さくら」に流用されてしまい、山陽新幹線に残るひかり号は、東京~岡山までの停車が日中帯にある他は、早朝・深夜を中心にいずれも特色のある列車ばかりである。

今回は日中帯の東京~岡山の定期列車を除く、個性的なひかり号たちに焦点を当てて紹介をしていきたいと思う。

かなり長い記事となりそうなので、まずは下り博多方向へ向かう定期のひかり号をピックアップしてみよう。続編では、上りの定期ひかりと、臨時ひかり号について取り上げたいと思う。(記事の内容は2019年8月現在)

一番列車の後を追って走るひかり441号

新大阪駅からの下りの一番列車は6時ちょうど発のみずほ601号鹿児島中央行きであるが、みずほ号は基本的に最小限の停車駅のみに停車するため、みずほ号が停車しない西明石、相生は、この列車が下り始発となる。(岡山より先は、みずほ601号に広島で接続できるこだま721号が始発である)

このひかり号は、新大阪~博多間を3時間19分かけて結んでおり、みずほ号やのぞみ号よりも、1時間ほど多くの時間をかけて、山陽路を走ってゆく。通過駅も、新倉敷、新尾道、東広島、厚狭の4駅しかなく、いわゆる鈍足ひかり「ひだま」と言われるタイプの列車である。しかしこの列車、特徴がいくつか存在する。

ひかり441号の特徴① 700系16両編成が使われる

2019年現在、この列車には、N700系でも700系(レールスター編成)でもなく、500系でもなく、700系の16両編成。つまり東海道新幹線乗り入れ仕様となっている700系がご指名で使われているのだ。山陽新幹線の定期列車では、このひかり441号と、後ほど紹介するひかり444号のみであるから、これは貴重である。

ひかり441号の特徴② 自由席が多く輸送力が高い

700系16両編成は、先ほど述べた通り東海道新幹線への乗り入れ仕様となっているため、JR東海が定めた(?)東海道新幹線の乗り入れ仕様に従い、普通車は全て2列×3列シートで、グリーン車が3両も連結されている。

つまり、山陽新幹線内だけで完結する列車のキャパシティを考えると、座席数が多いのだ。また、自由席利用者に嬉しいのが、この列車、自由席がものすごく多いのである。

以下の参考リンクも併せて確認頂ければ納得いただけると思うが、1~7号車と13~15号車が自由席なので、普通車禁煙席だけで9両もの車両が自由席なのだ(15号車は普通車喫煙席なので注意。普通車喫煙席の自由席は、東海道新幹線の700系が使用されるこだま号とこのひかり441号にしか存在しない貴重なものである)。

しかも、9両すべて2列×3列シートのため、着席定員が多く確保されているのだ。6時3分発と、時間が早いことがネックではあるが、山陽区間の自由席争奪戦に敗れてしまった人は、このひかり441号の利用を検討することで、座席にありつけるかもしれない。

参考 ひかり700系JRおでかけネット

ひかり441号の特徴③ 通過駅は少ないが広島までなら先着

今回の記事の為に調べてみて意外だったのが、このひかり441号、通過駅が広島までの区間で3駅しか無いにも関わらず、意外と速いのだ。

先行するみずほ601号が、広島まで1時間25分なのだが、ひかり441号も1時間47分で新大阪~広島間を結んでいるわずか22分差しか無いのである。

これは、広島まで後続列車の退避が無いからに他ならない。さすがに広島では新大阪を22分後に出たさくら541号に道を譲るが、それでも広島まで先着というのは大きい。

その後もほぼ各駅停車ではあるが各駅での後続列車退避時間はなく、大きなタイムロスもせずに着実に博多へと向かっていき、さらに後続のさくら543号には、博多まで追いつかれることは無い。新大阪から乗り通しでも、十分に使える列車だろう。

ひかり441号の特徴④ 旅行商品を使っての格安旅行が可能

次に登場するひかり491号もそうだが、新大阪~博多を通しで運転する貴重な「ひかり」であることと、恐らく乗車率がそれほど良くないだろうという理由から、2019年現在、新大阪~小倉・博多間で日本旅行をはじめ、各社が格安の旅行商品を発売している。

旅行商品とはいうものの、「1名利用・片道利用が可能な新幹線を利用した格安ツアー」であり、実質は片道きっぷとして利用できる。

申込期限やキャンセル料などがJRとは異なるため注意する必要があるが、それさえクリアできるなら、非常にお得である。日本旅行のプランを見ると、グリーン車に+500円で乗車できるというのはあまりにも格安だ(通常は営業キロ401キロ以上600キロまでの区間で、5300円かかる)。

このプランを使うのであれば、グリーン車を使う方が満足度は格段に高いと思うし、博多までの3時間半近くの行程なら、なおさらだ。

参考 【新大阪⇔博多・小倉・熊本・鹿児島中央】バリ得こだま・ひかり・つばめで行くお得な旅日本旅行

早朝の東海道からのひかり3兄弟 ①ひかり491号

ひかり491号は、名古屋駅を6時35分に発車する名古屋発博多行のひかり号で、東海道新幹線から唯一博多駅まで乗り入れるひかり号である。

名古屋から博多方面への始発列車は、6時20分ののぞみ95号博多行きであるため、この列車の役割は、6時20分ののぞみに間に合わない名古屋駅ユーザーと、のぞみ95号が通過する岐阜羽島、米原駅からの乗客を、山陽方面に運ぶ役割を担っている。

ひかり491号の特徴① 終点まで退避が無い

ひかり491号は、なんと終点博多まで先着するひかり号なのだ。名古屋~博多間を3時間36分新大阪~博多間は2時間36分で結ぶ。

のぞみ95号が名古屋~博多間を3時間20分で結び、新大阪~博多間は2時間28分なのだから、いかに両者の差がないか分かるだろう。

名古屋~新大阪は各駅停車とはいえ、後続列車がいないので退避がなく、新大阪~博多では、姫路、福山、新下関の3駅に追加停車するものの、新大阪を18分後に発車するみずほ603号には追い付かれずに博多に到達するため、俊足のひかり号であるといえるだろう。

ひかり491号の特徴② 自由席は少ないが輸送力は高い

ひかり491号は、東海道新幹線から直通するがゆえのルールなのか、自由席車両が先ほどのひかり441号とは異なり、1号車から5号車までとなっている。ただし、これは何も悪いことばかりではない。

繁忙期の山陽新幹線の指定席が取りにくい理由として、「そもそも指定席の数が少ない」ことがあるからだ。みずほ・さくらの指定席は、シート数が2列×2列で快適に過ごせるのだが、1列車の指定席は、普通車指定席282席、グリーン席24席の306席しかない

これでは普段は足りても、繁忙期にはとても足りないだろう。ここにひかり491号が入ることで、6号車~16号車までの普通車指定席683席、グリーン席200席と、合計883席の指定席が賄えるのは大きい。

ひかり491号の特徴③ 旅行商品を使っての格安旅行が可能

ひかり441号の部分にも記載したが、新大阪~博多を通しで運転するひかり号のため、格安旅行商品の使用が可能である。

また、繁忙期以外の時期には指定席には空席が目立つと思われるので、積極的に旅行会社に座席を販売しているのだろう。

重複になるためここでは詳しく記載しないので、ページ上のひかり441号の説明をご覧いただきたい。

早朝の東海道からのひかり3兄弟 ②ひかり493号

ひかり493号
西明石駅に長時間停車するためその際に撮影

ひかり493号は、早朝の東海道からのひかり3兄弟のうち、唯一始発駅が新横浜駅である列車で、新横浜発広島行のひかり号である。

新横浜駅を6時ちょうどに発車すると、N700系の性能をフルに活用して爆走し、後続ののぞみから西明石駅まで逃げ切る。役割としては、後続の「のぞみ」の混雑緩和と、なるべく客を拾いたい、という思惑もあるのだろう。

さすがに、名古屋以東の停車駅が新横浜だけでは、乗客も少ないのは目に見えているため、小田原と静岡にも停車させているのだろうが、それがまたかゆいところに手が届くチョイスなのである。

同じひかり停車駅である浜松や豊橋からも西行き需要はあると思うが、そちらは新大阪行きのこだま693号が6時30分頃に出るので、それを使えばひかり493号と新大阪着はそう変わらない。

こだま693号は静岡始発だが、静岡の発時刻は6時7分と非常に早いため、利用できる人も限られてくるだろう。そのために停車駅に静岡を入れたと思われる。

また、小田原はそもそも始発列車が遅く、7時台が下り始発だったため、実は新横浜より恩恵を受けられている駅なのかもしれない。

ひかり493号の特徴① 全列車で唯一の新横浜駅始発列車

これまで、品川駅が始発の列車(のぞみ99号)は存在していたが、新横浜駅の始発列車というのは、このひかり493号(前身はひかり393号だが)が誕生するまで存在していなかった。

ひかり493号の特徴② 新大阪までは「のぞみ」以上

ひかり493号は、新横浜~新大阪間を、2時間12分で走破するが、これは同じ新横浜を6時49分に出発する「のぞみ5号」の、2時間14分よりも速い。

始発列車であり、前方列車が詰まっていないことによるものだが、あまりにも速い。全区間のダイヤは次の通りであるが、西明石までは退避することなく駆け抜け、西明石でようやく、後続ののぞみ99号と1号に道を明け渡す。

ただ、その後も鈍足というわけではなく、姫路、岡山、福山と後続列車に抜かれることはない。細かいダイヤなどは無視して意見すると、あえて西明石に止めずに姫路で退避しても良いのではないかと思ったが、西明石駅の利便性のためなのだろうか。さらに20分後には、この後紹介するひかり495号もあるのだが、利便性がイマイチなのだろう。

Shin-Yokohama
新横浜
6:00発
Odawara
小田原
6:15着⇒6:16発
Shizuoka
静岡
6:40着⇒6:41発
Nagoya
名古屋
7:24着⇒7:25発
Kyoto
京都
7:59着⇒8:00発
Shin-Osaka
新大阪
8:12着⇒8:14発
Shin-Kobe
新神戸
8:28着⇒8:29発
Nishi-Akashi
西明石
8:37着⇒8:45発
Himeji
姫路
8:56着⇒8:56発
Okayama
岡山
9:16着⇒9:17発
Fukuyama
福山
9:32着⇒9:33発
Hiroshima
広島
9:56着

ちなみに全区間で比較すると、ひかり493号は新横浜~広島を3時間56分で結ぶ。

先ほど引き合いに出したのぞみ5号は、3時間42分であるから、差は14分しかない。 これぐらいの時間差なら、広島まで乗り通しても十分使える列車ではないだろうか。

早朝の東海道からのひかり3兄弟 ③ひかり495号

ひかり495号は、名古屋発広島行のひかり号である。とはいえ、こちらは名古屋~広島を2時間58分かけて結ぶ鈍足ひかりである。

ひかり493号が爆走しているのとは対照的な列車で、こちらはなんと名古屋から岡山までを各駅停車で結んでいる。また、退避も多く、米原で3分、西明石で5分、相生で16分(!)停車時間がある

つまり、名古屋~岡山までは「こだま」の役割を果たしていると考えた方がいいかもしれない。岡山を出ると、その先の途中駅は福山だけに停車となり、ここだけを切り取れば「ひかり」と言えるかもしれないが、福山に関しては、この列車が停車する4分前にのぞみ5号が停車しているので、ほぼ利用価値がないようにも思える。

誰か存在意義や利用価値について教えてほしい。ただ、車両を広島送りにしたい運用の都合…という可能性もあるが。

ひかり495号の特徴① 少し前まで先行列車の1分続行だった

名古屋駅では、のぞみ1号とひかり495号が続行で出発するダイヤとなっているが、一時期、のぞみ1号が7時35分。ひかり495号が7時36分ととなんと時刻上は1分の続行という、新幹線ではありえないようなダイヤが組まれていた。

2019年ダイヤでは、ひかり495号の発車が7時37分となったものの、それでも2分続行なので、新幹線ダイヤではかなりの過密ダイヤと言えそうだ。

もっとも、のぞみ1号は京都まで途中駅は通過し、ひかり495号は岐阜羽島で停車するので、すぐに差は開くのだが。

ひかり495号の特徴② 繁忙期の指定席入手の最終手段

冒頭、存在意義について疑問を呈したところではあるが、この列車はほぼ「こだま」相当ではある。しかし、東海道から直通するひかりの宿命か、自由席は1~5号車となっている。ということは、指定席が多いということだ。

名古屋7時37分発で、新大阪8時39分発なので、行楽には最も良い時間の列車である。当然、この列車を除く前後の時間帯は、一瞬で満席となってしまっているだろう。

それでも、発売からしばらくの間は、このひかり495号には空席が見られる。新大阪~広島間は、1時間56分かかり、のぞみ号よりは30分余計にかかってしまうが、それでも10時35分には広島に到着できるので、広島が目的地の場合でも、そこから乗り換えて博多方面を目指すことも十分にできる時間だろう。

のぞみ号などの指定席を取り逃してしまった場合は、この列車も頭に入れておくと良いかもしれない。

深夜の流星! ひかり443号

最後に紹介するのがこのひかり443号である。この列車は、新大阪を20時30分に発車し、終点の博多には23時51分に到着する。

新大阪から博多への最終は、21時36分に新大阪を出発するのぞみ59号が、23時54分に到着だから、ほぼ1時間差のついた列車と、終着駅の到着時間がほとんど変わらない。

ひかり441号と同じような、いわゆる鈍足ひかりである。ただしこの列車は、西明石で11分、三原でも4分の停車時間があるため、新大阪~広島程度の中距離でも乗り通すことは想定しておらず、近隣駅同士の利用のために設定しているのだろう。

ひかり443号の特徴① 貴重なレールスターの定期列車

ひかり443号は、下り1本、上り2本が残っている定期のひかりレールスターの1本であり、下りでは唯一の列車である。

残念なことに、残っている定期のレールスターは、全て近距離輸送を意識しており、長距離の移動には使いにくいというのが現状だ。

レールスターなので、こだまでは使うことのできない「個室(コンパートメント)」席も予約できるが、時間帯も夜中なので子連れには使いにくいし、そもそも個室で移動するような層をターゲットにしていない列車と思われるので、個人的には少し残念な列車のように思う。

また、この列車も一部の旅行会社では、格安での旅行商品を扱っているようだ。要件がマッチするようであれば、使ってみるのもよいかもしれない。

ちなみに参考にリンクを貼った以下の商品は、九州発の商品(九州からの往復購入か、九州からの往路のみの購入しかできない)なので注意してほしい。

参考 山陽新幹線ひかり号・こだま号限定プラン発売!なんと片道利用OKでこんなにお得!JTB

個性のありすぎる山陽新幹線のひかり号

ここまで紹介したように、山陽新幹線のひかり号は個性的で、それぞれの列車がどれも個性的であることが分かって頂けただろうか。

本編ではひかり441号からひかり443号まで5本の列車を紹介してきたが、それだけで記事がこのボリュームになってしまった。

ただ、まだこれで半分である。次回は上り方向になるが、あわせて山陽新幹線を走っている臨時ひかりも紹介してみたいと思う。

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