新幹線での新型コロナ感染リスクは?

今夏は節電で2000円相当のポイント還元?国民の理解を得るには程遠いその仕組みと問題点

エネルギー資源の高騰に伴い、電気料金が上がっている。その一方で、今夏は発電所の発電能力不足により、供給不足による電力不足が深刻な問題となっている。そんな高騰する電気代と供給不足の解決の切り札にと、政府が投入してきたのは「節電ポイント」なる謎多き取り組みだった…。

なぜ今年、電力は枯渇しているのか

まず最初に、なぜこんなに電力はひっ迫しているのか。

資源エネルギー庁が5月に発表した「2022年度の電力需給見通しと対策について」には、次のような記載がある。

①火力の休廃止増加や福島沖地震の影響等による供給力の不足

②コロナの影響等により経済社会構造が変化する中での電力需要の増加

③ウクライナ情勢等により不確実性が高まる燃料調達リスク

資源エネルギー庁「2022年度の電力需給見通しと対策について」

要は、火力発電所が老朽化によって停止する中、コロナの落ち着きによる経済活動の増加やウクライナ危機などが重なって、不幸にも電力が供給できない。という状況らしい。

記憶に新しいのは今年3月に発生した「電力需給ひっ迫警報」だろうか。地震直後で発電所がかなり停止している中、3月としては異例の冷え込みとなって電力需要が非常に厳しくなることが予想され、2012年以来10年ぶりに警報が発令された。

その際には停電は回避されたが、改めて電力の安定供給に課題があることを思い知らされた。先進国のはずなのに。

参考 2022年度の電力需給見通しと対策について資源エネルギー庁

政府が進める「節電プログラム」の仕組みと問題点

このような背景があり、電力需要が増加する夏は、再び3月のような電力供給の危機が訪れる可能性がある。それを防ぐために、毎度毎度の国民へのお願いと言うワケだろう。

しかし、毎回タダでお願いを聞く国民も、いつかは堪忍袋の緒が切れる。

そんな国民の怒りを鎮めるのが、「節電プログラム」によるポイント付与なのだろう。

しかし、この節電プログラム、発表されてからも国民からは散々な評価である。その問題点について考えてみた。

問題① 根本的な問題の解決になっていない

そもそも根本的な解決になっていないというのが、第1の問題だ。

電力のひっ迫は、需要が供給に追いつかないから発生するのであって、防ぐためには供給を増やすか、需要を減らすかしかない。そもそも、今回の電力不足の原因は、基本的には電気を使う国民にあるわけではない。

にもかかわらず、政府の方針は「需要を減らす」方向に舵を切ったのだ。

つまり、供給を増やす努力はせずに、需要を減らす方向に動いた

もちろん、発電所はすぐに造れるものではない。しかし日本には稼働していない原子力発電所がたくさんある。なぜなら、東日本大震災の福島第一原発の事故を機に、原子力発電所の脆弱性が露呈し、現在では一部の原子力発電所を除いてほとんどの原発が停止してしまった。

もともと日本には資源がない。それを分かっていたから効率のいい原子力発電が数多く導入されたのだが、今ではすっかり持ち腐れてしまっており、再稼働のメドすら立っていないのだ。

電力不足だ、原油高でコスト増だ、コスト増分は電気代に転嫁だと騒ぐ前に、これらを再稼働させて電力を安定供給できるような体制を整えるための活動を前に進めていくことが、「節電ポイント」より大事なのではないだろうか。

問題② たかだか2000円相当のポイント還元

節電ポイントの仕組みはいまいちよく分かっていないが、政府の発表によれば、まず「節電プログラム」にエントリーすることで、2000ポイントが貰える。そして目標を超える節電を達成した場合には、もう少し上乗せするよ。という、非常にわかりにくく曖昧な周知がされている。固定給+歩合給。みたいなものだろうか。

東京電力のサイトに節電ポイントの案内があったが、これはいわゆる「歩合給」の部分だと思われ、通常の使用量と比較したうえで、節電されているかどうかを評価する仕組みらしい。電力の需給が厳しいことが予想される日に、節電チャレンジデーのようなものが設定され、いつもの使用量と比べて減っていれば目標達成!ポイント付与。ということらしい。

つまり、元から節電している人ほど不利。という状況になる。

まぁ、使用電力量が減れば万歳。ということで、制度設計上の問題は二の次ということだろうか。

東京電力のサイトより「節電ポイントのしくみ」

参考 夏の節電チャレンジ2022東京電力

問題③ 真夏の節電は命の危機

3つ目の問題は、毎年のように真夏に節電してエアコンを付けずに熱中症で亡くなる人がいる中、このような施策を推し進めてしまうことだ。

たかだか2000円+αのポイントを貰うために、暑い中やせ我慢する人はそう多くないだろうが、仮に高齢者などが本気でチャレンジしてしまったら、命の危機を迎える事だろう。

誰もそこまで頭が回らなかったのか、ただただ疑問。

問題④ 膨大なシステム構築

そして、ポイントを付与します!ということは、当然それ用のシステムを構築しなければならない。ポイントの付与は電力会社単位で行われるため、システムは参加する電力会社の数だけ必要となる。

(電力会社共通ポイントのようなものがあるのなら、中央に1システムを置くだけで良さそうだが…)

東京電力は既に節電ポイントの仕組みが完成しているようだが、中部電力にはそのようなポイント制度は見当たらなかったし、関西電力は何かしらポイント制度はあるものの、節電ポイントというものではない。

ひとまず、まだシステムができていない各電力会社は、突貫工事でポイントの管理や付与を行うためのシステム構築を行うのだろうが、国が推し進める施策である以上、税金が原資となってシステム構築を行うのだろう。

しかも、電力会社単位で行う必要があるので、同じようなシステムを電力会社分構築することになるのだろうが、果たして費用対効果はどの程度出るのだろうか。そして来年もこれを続けるのだろうか?

1年限りで終わってしまえば、投資効果に対するリターンなど無いに等しいだろう。

根本原因を取り除くことにリソースを投入しない不思議

ここまで見てきたように「節電プログラム」は、小手先だけの需要調整にしかならず、根本的な解決にならないどころか、はした金のために国民の命を熱中症の危険にさらしたうえにシステム構築費用電力会社の数だけかかるという、無駄に金を使って「何がしたいの?」と思わざるを得ないような制度となりそうだ。

正直、個人的には2,000円ポイントを貰って節電するより、今まで通りエアコンを使って快適な暮らしを求めると思う。ここ数年の異常な暑さの夏になるのであれば、尚更だ。

先にも書いたが、電力需要がひっ迫することが分かっているのであれば、電力供給を増やすという根本的な対策をまず考えるべきであって、コロナ禍から続く「国民へのお願いベース」で何でもかんでも片付けるのは悪手だろう。

いつまでも国民への努力目標を課すお願いばかりで、そのお願いを聞いても結局は何のリターンも無いことを、国民は学習している。

岸田政権は国民の声を聴くというのは何だったのか。

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