皆さんは東京~名古屋間を公共交通機関、それも速達性を求めるのならば、何を利用するだろうか?恐らく、聞くまでもなく「東海道新幹線」だと返答があると思う。
しかし、東京~名古屋間の速達移動手段は新幹線だけではない。知らない方もいるかもしれないが、なんと飛行機が運航されているのだ。もちろん定期便で、毎日運航されており、誰でも利用できる。
今回、たまたま羽田~名古屋間で航空便を利用する機会があったので、その内容も含めて新幹線と「ガチ比較」してみよう。
目次
基本的に東京~名古屋間の速達移動は新幹線1強だ
始めに結論から言っておくと、「ガチ比較」と言ったものの、実用レベルで使える交通機関は実際のところ新幹線1強である。間違いない。この記事はその結論ありきで読んでいただけると幸いだ。
都合さえつくならば「意外と飛行機も捨てたものではない」というところだ。
東京(羽田)と名古屋(中部)間は、直線距離にすれば300㎞もない。とはいえ、北陸新幹線が開業する前の羽田~富山便や羽田~小松便などのように、直線距離は近くても不便な地には航空便が就航しているのはごく当然の事だ。
しかし、羽田~名古屋間の場合、その競争相手となる新幹線は、16両編成の長大な新幹線がひっきりなしに走る東海道新幹線であり、飛行機の付け入る隙は全く無いように思える。
にも関わらず、東京~名古屋間には毎日定期便が運航しているのだ。一体何のために?
理由は、この便が主に国際線を運航する便との乗継ぎ利用を主眼においているからだ。
国際線で羽田に降り立ってから、品川駅へ向かい新幹線で名古屋へ行っても良いのだろうが、どうしても移動する距離が長くなってしまい、利便性が悪い。乗継需要を考えれば、一般的な移動需要ではありえない航空便を設定しても、採算は取れると判断したのだろう。
今回、羽田⇒中部で搭乗した便も、多くの海外の航空会社とコードシェアがされており、名古屋への直行便がないところからのアクセスをスムーズにしたい意図を強く感じるものであった。
そして勿論、この便単独で搭乗することも可能である。
東京~名古屋間 新幹線と飛行機の定量的な比較
運行本数は新幹線が大差をつけている。新幹線が定期列車だけでも1時間に最低3本は運転しているのに対し、飛行機は1日3便だ。しかも3便のうち2便は、異なる航空会社(JAL/ANA)が1便ずつ同じような時間に飛ばしており、実質2便しかないとも言える。
のぞみ号限定でも片道50本以上(3本/h以上)
1日3便(3往復)
※JAL2往復、ANA1往復。成田ー中部は除く。
運行本数で飛行機は新幹線に大きく水をあけられてしまっている。
所要時間は、出発側は自動改札を通り抜けたところ(飛行機であれば保安検査を抜けたところ)からスタートすることとする。この場合、自動改札から乗車まで。最低5分はかかるものと考える。
また、飛行機の場合は、保安検査は出発20分前がリミットなので、保安検査の締め切り時間を考慮に入れて考える。
朝の東京⇒名古屋方向で測定し、名古屋の繁華街である地下鉄栄駅に目的地を設定して算出することとする。
8:16 自動改札機通過(東京駅)
8:21 東京駅発(のぞみ209号)
9:56 名古屋駅着
>>>乗り換え(新幹線⇒地下鉄東山線)>>>
10:11 名古屋駅発(地下鉄東山線)
10:16 栄駅着
所要時間:2時間0分
7:55 保安検査通過締切
8:15 羽田空港発(JAL201便)
9:15 中部国際空港着
>>>乗り換え(名鉄線)>>>
9:37 中部国際空港駅発(名鉄線)
10:01 金山駅着
>>>乗り換え(名鉄線⇒地下鉄名城線)>>>
10:09 金山駅発
10:17 栄駅着
所要時間:2時間22分
保安検査が出発20分前までという縛りは大きく、およそ20分程度の差がつく結果となった。飛行機に新幹線と同じように「飛び乗り」ができるようになれば差は縮むだろうが…。
飛行機の運賃というのは、同じ区間であっても時間帯によって運賃が異なるのが当たり前である。今回は、東京を起点に午前中に名古屋に向かうという前提で考えるため、最安料金ではないのだが、時間帯が許すならより安く行くことが可能である。
以下の図を見て頂くとわかるように、羽田8:15発はウルトラ先得でも10,010円という運賃設定なのだが、羽田19:10発はウルトラ先得であればなんと8,210円となる。1,800円の違いは大きい。
逆に、名古屋⇒羽田に関しては、中部21:00発が10,010円であるが、中部7:50発は9,510円となっている。
当然と言えば当然かもしれないが、朝に東京から出ていく便と、夜に東京に帰る便が、その逆と比較して需要があるため料金に反映されているのだろう。
飛行機利用時の運賃料金は、まとめると以下のようになる。
羽田⇒中部(名古屋) JAL201便 ウルトラ先特(55日前まで)10,010円
中部国際空港⇒金山 名鉄(ミュースカイ)830円+指定360円⇒1,190円
金山⇒栄 名古屋市営地下鉄 210円
合計:11,410円
一方で、新幹線については、原則としていつの乗車でも運賃・料金は変わらない。飛行機が先得55日前予約で比較しているので、新幹線についてはEX予約のEX早特21ワイドを利用する前提で計算する。
東京⇒名古屋 EX早特21ワイド(21日前まで)9,800円
名古屋⇒栄 名古屋市営地下鉄 210円
合計:10,010円
飛行機は11,410円なので、料金の面でも飛行機は勝ち目がない…。
飛行機に関しては、別の便が割安ということもある。
例えば、羽田19:10発のJAL209便(名古屋/中部行き)は、ウルトラ早得を利用さえできれば、8,210円だ。
これを利用することで、名古屋都心部へのアクセスを考慮しても新幹線利用より安価となる場合がある。ただし、移動する事情によっては、当然こんな悠長なことは言っていられないので、使えたらラッキーぐらいに考えるべきだろう。
羽田⇒中部(名古屋) JAL209便 ウルトラ先特(55日前まで)8,210円
中部国際空港⇒金山 名鉄(ミュースカイ)830円+指定360円⇒1,190円
金山⇒栄 名古屋市営地下鉄 210円
合計:9,610円
ここまでの評価結果をまとめると以下の表のようになる。特に運転本数に関しては圧倒的に新幹線である。
しかし、所要時間や運賃に関しては、思ったより差が付かなかったというのが感想だ。所要時間に関しては中部国際空港という離れた場所に空港があるため、もっと大差がつくと思ったが、保安検査の締め切りによるタイムロス程度の所要時間差しか発生しなかった。
比較要素 | 新幹線 | 飛行機 |
運転/運航本数 | ◎(3本/h以上) | ×(3便/日) |
所要時間 | ◎(栄まで約2時間) | △(栄まで約2時間20分) |
運賃/料金 | 〇(約10,000円) | 〇(約10,000~12,000円) |
とはいえ、あえて飛行機を使いたくなる理由があるとしたら一体何なのだろうか。
定量評価は新幹線が圧倒の中、あえて「飛行機を選ぶ理由」
飛行機はある意味「アトラクション感」の強い乗り物だと、個人的には考えている。
普段からよく使う人であればそうは思わないかもしれないが、基本的に新幹線で東京へ出られるエリアに住む人は、飛行機を利用する機会はかなり限られてくるのではないだろうか。
普段から飛行機を使う機会がないと、空港の独特の旅情を感じる空気感や搭乗の際の高揚感は格別だろう。そして搭乗してベルトを締め、タキシングでゆっくりと進んでいく時間からついに離陸して飛び立つ時にそれはピークになる。
どうせ運賃もそう変わらず、所要時間も許容範囲ということであれば、「あえて」アトラクションに乗る気分で飛行機を選んでみるというのも、全く悪い選択肢ではないと思うのだがどうだろうか。