新幹線の運転士は、男子たるもの、将来の職業にしてみたいと思った人は多いのではないでしょうか。最近では、女性で新幹線運転士をされている方もいらっしゃいます。
新幹線は、日本の誇る技術の一つですので、職業として携わりたいと思う人は多く、私もかつては将来の進路として真剣に考えていました。
そんな魅力のある新幹線運転士を志す方に、新幹線の運転士になるにはどうしたらよいのか。あわせて、新幹線の運転士という職業のオモテとウラを紹介します。
目次
新幹線は、JR四国を除くJR5社が運行しています。運行する区間、路線は次の通りです。当然ながら、新幹線の運転士になるには、これらの路線を運行するJRのどれかに入社しなければなりません。
- JR北海道 新青森~新函館北斗(北海道新幹線)
- JR東日本 東京~新青森(東北新幹線)
- JR東日本 東京~新潟(上越新幹線)
- JR東日本 東京~上越妙高(北陸新幹線)
- JR西日本 上越妙高~金沢(北陸新幹線)
- JR東海 東京~新大阪(東海道新幹線)
- JR西日本 新大阪~博多(山陽新幹線)
- JR九州 博多~鹿児島中央(九州新幹線)
北陸新幹線の境界は上越妙高駅ですが、乗務員の交代は全列車が停車する長野駅で行われます。実質、長野駅が境界とみても問題ないでしょう。
ただ、本気で「新幹線の運転士を目指す」つもりなら、どこの会社でも良いというわけではありません。
いきなり結論を書いてしまいましたが、本気で新幹線に携わりたいのであれば、迷うことなくJR東海へ入社しましょう。
なぜJR東日本ではなく、JR東海を推奨するか。それは、会社の売上で新幹線の占める割合が圧倒的に多いからです。以下の参考サイトに非常に詳しく掲載されていますが、JR東海は新幹線の売上が1.25兆円に対し、在来線は0.11兆円と、10倍以上の差をつけています。一方のJR東日本は在来線が1.25兆円で、新幹線は0.59兆円となっています。新幹線だけの単純な売り上げでも、JR東海はJR東日本のおよそ2倍の売上があるのです。
参考 国鉄解体から32年。JR大手3社を徹底比較!Strainer
このことからも、JR東海のまさに「命綱」とも言えるのが新幹線事業であり、新幹線に最も力を入れているのがJR東海といえるので、新幹線運転士になるには、JR東海に入社することが最も近道といえる根拠です。あまりに新幹線一辺倒であるため、一部からは「JR新幹線」と揶揄されるほどですが、それは裏を返せば、新幹線に携われる確率をぐっと上げることになります。
ちなみに、JR東海の路線のうち、それらしい在来線の路線は、東海道線(米原~熱海)と中央線(名古屋~中津川)くらいでしょう。東京や大阪のように網の目のような路線はないですし、膨大な本数の列車が走っているような路線もありません。せいぜい、朝晩に少し本数が増えるくらいです。
また、関係者でないため真偽は分かりませんが、JR東海を除く各社は、在来線で優秀な乗務員を、新幹線に登用するということを行っているため、新幹線運転士になるまでには時間がかかります。その点。JR東海は、最初から新幹線の戦力として採用するので、手っ取り早く運転士になることができるようです。
JR東海には様々な採用形態がありますが、最も新幹線運転士に近いのが、「プロフェッショナル職(運輸)」系統です。一応、2019年時点のJR東海の各職種について簡単に説明をしておきます。
- 総合職(事務系)
- 総合職(運輸系)
- 総合職(技術系)
- プロフェッショナル職(運輸系)
- プロフェッショナル職(技術系)
- アソシエイト職
このように細かく分かれています。今回は「技術系」としてまとめてしまいましたが、技術系の中にはさらの車両、機械、施設、電気、システムなどの細項目があり、自分の専攻分野などを考えて応募することとなります。
これらの職種のうち、新幹線を運転できるのは、総合職(事務・運輸系)か、プロフェッショナル職(運輸系)に限られます。また、総合職はいわゆる「キャリア組」であるため、新幹線を実際に運転するのは「研修の一環」で、ほんの僅かな時期です。そもそも、総合職で入社するハードルは非常に高く、実質「プロフェッショナル職(運輸系)」の選択肢が現実的になるかと思います。
JR東海では中途採用をしていませんので、新卒採用で入社することが絶対条件となります。ちなみに、JR他社では中途採用こそありますが、運転士になるための中途採用はしていません。
プロフェッショナル職を目指すのであれば、大学、短大、専門、高校のいずれかを卒業見込みであれば問題ありません。また、プロフェッショナル職は大学名によって選別することをしていませんので、どこの学校からでもチャンスは広く開かれているといえるでしょう。
ただし、高校卒で入社を考えている方は、そもそも学校に求人票が来ることが前提となっていますので、詳しいことは学校に確認してみるようにしてください。学校に相談して何ともならないのであれば、大卒採用に移るしかありません。
運輸系統の社員に求められるのは、お客様への臨機応変な対応などに代表される、いわゆる「コミュニケーション能力」が最重要視されます。
今でもその傾向は変わらないでしょう。むしろ、どの会社でも必要です。私もJR東海のプロフェッショナル職(運輸系)に学生時代に応募しましたが、その際はなんと面接5回という徹底ぶりでした。ちなみに、筆記試験は一切なく、エントリーシートを提出した後はいきなり面接でした。ただ私は残念ながら、3回目の面接で不合格となりました…。
これが何を意味しているかは分かりますか?プロフェッショナル職はお勉強なんてどうでもいいから、相手の話が聞けて、ちゃんとコミュニケーションができる人材か、というのを見極めているんです。
ちなみに、総合職(事務)も面接のみ、との事でしたが、こちらはバッチリ学歴を見て足切りされます。一定水準未満であれば、おそらく見向きもされないでしょう。(技術系ならまだマシなようですが…)
鉄道会社は基本的に「鉄道マニア」が嫌いです。とはいえ、鉄道マニアでも入社している人は、おそらくたくさんいるでしょう。入社できた人たちはおそらく、入社試験では一生懸命鉄道マニアであることを隠していたのではないかと思います。
鉄道会社がマニアを嫌う理由は簡単で、趣味が高じて入社した社員は、仕事の中でその趣味が悪さをする確率が高いからです。 JRに入社できれば、貴重な列車の指定席のきっぷを10時打ちで、うまいこと「指のみ券」で出すことだって簡単にできるでしょう。
出したきっぷを使うのか、売るのか、コレクションするのかは分かりませんが、それらは会社の立派な「商品」であり、それに手を付けることは、会社への裏切りですし、その「商品」が他社の列車であれば、会社間の問題になってしまいます。
そういったことが起こる確率が一般人より高いのは、やはりリスクになるのです。
入社できたからといって、いきなり新幹線の運転士になれるわけではありません。まずは駅から入り、その後車掌を経験してから運転士になるというのが、標準的なキャリアパスとなるようです。
ネット上の意見を見ていると、チラホラ勘違いをしている方もいるのですが、プロフェッショナル職は「大卒」と「短大・専門・高卒」で分かれています。これらを一まとめに「プロ職」として扱っている方が多いのですが、採用枠が分かれている以上、扱いは異なってきます。
「短大・専門・高卒」 に関しては、基本的に現業機関(現場)でそのキャリアを過ごしていきますので、いわゆるプロフェッショナル職の代表的なケースでしょう。しかし、大卒プロフェッショナル職に関しては、現場と非現業機関(オフィス)を行き来するキャリアパスとなることが多いようです。このため、運転士になれたとしても、数年で異動となり、運輸系統の枠の中で、非現業部門を含めて様々な職に挑戦することもあり得ます。
また、高卒でも、一定以上の経験年数を経て昇格をすると「助役」という現場での管理業務をする立場となります。そうなると、運転士は実質引退となるケースが多いようです。
私は結局なることができませんでしたが、傍目から見た印象です。
私はなることができませんでしたが、東海道新幹線の運転士というのは、鉄道マンを志す人の中では、最高峰の職業ではないでしょうか。日々多くの乗客を乗せて、高密度運転するその最前線で働くというのは、やりがいがあるでしょう。
何より、小さいころから憧れていたのであれば、その喜びと達成感は得も言われぬものがあるでしょう。
- 休みが不規則
- 人身事故対応
- 変な乗客への対応
- 迫りくる東海地震
現実的な問題として、ぱっと思いつくだけでも4点ありました。
1番目の「休みが不規則」ですが、これは365日止まることが許されないインフラとして、覚悟している方も多いでしょう。休みや勤務シフトは不規則ですし、特に皆さんが休みをとるGW、お盆、年末年始にはとても忙しくなります。
2番目の「人身事故対応」ですが、新幹線は在来線と比べたら少ない方ですが、運輸系統を目指すのであれば、キャリアの一環として在来線を担当することもあるでしょう。その場合、仮に人身事故が起こった場合の初動対応をするのは、他ならぬ乗務員です。
3番目の「変な乗客への対応」ですが、これも酔客が増える時間になれば、頻繁に発生します。通勤や出張で電車や新幹線を使うだけでも割とトラブルになっているのを見かけるぐらいなので、日々仕事として携わっているのであれば、遭遇する機会は多いのではないかと思います。
最後に、「東海地震」です。
来る来る、と言われていていつまでも来ないこの地震ですが、発生すること自体はほぼ間違いないと考えて良さそうです。
東海道新幹線も、地震を検知した際になんとか安全に停める方法については検討をしているようですが、問題は止まった後です。かの東日本大震災では、津波による甚大な被害が発生しましたが、東海地震でも海溝型巨大地震ですので、当然のように巨大津波が押し寄せるでしょう。
東海道新幹線は、特に浜名湖付近で、海に近いところを走っており、海に隣接している浜名湖の上を走る部分もあります。もし、そんな時に東海地震がやってきたら…。
ここまで、新幹線の運転士になるために必要な知識について紹介してきました。まとめると、以下のような形となります。
- 新幹線の運転士を目指すにはJR東海へ
- プロフェッショナル職(運輸系)を目指す
- 入社試験はコミュ力主義
ただし、うまく入社できたとしても、退職するまで新幹線の運転士をするということは難しく、大卒社員を中心にジョブローテーションで非現業箇所(オフィス)を含めて、様々な仕事を経験していくこととなります。
また、最後にウラの姿としても説明しましたが、労働条件としては、結構厳しいのではと思います。勤務は不規則で連休期間は働き詰め。おそらく泊まり勤務もあるでしょう。その他にも乗客対応、事故対応など、様々なトラブルが待ち受けていることかと思います。
でも、それでも新幹線の運転士を目指したいんでしょう?
私は結局なれませんでしたが、上記のようなことが起きても、運転士になりたい!という思いはありました。
高卒の方であればこれから就職活動は本格化するでしょうし、大卒の方であればこれからでしょうか。いずれにしても、このページが夢を追いかけるための参考になれば幸いです。
応援しています。
安全ヨシ!