新幹線での新型コロナ感染リスクは?

みんな大好き東京行き最終列車「のぞみ64号」は何故混雑するのか?

のぞみ64号

東海道新幹線の上り最終列車「のぞみ64号」は、博多⇒東京間の所要時間最速列車かつ最終列車であり、東海道新幹線でも有数の混雑を誇る列車として知られている。動画サイトなどで「のぞみ64号」と検索すると、ピーク時の自由席における混雑に体当たりで突撃した動画もあるなど、一部の界隈では非常に有名な列車である。

また、新大阪駅での停車から発車までの時間は通常2分程度であるが、この列車は21時20分に新大阪に到着するものの、発車は21時24分でなんと4分間も停車時間が確保されており、それだけ新大阪駅での乗降が激しいことを意味している。

今回は、この「のぞみ64号」が何故そこまで混雑するのかについてご紹介したい。

最終列車はもともと需要が高いうえに悪条件が重なる「のぞみ64号」

新幹線の最終列車は、東京へ戻る時間を少しでも遅くしたい人にとって重要な列車であり、ここ最近のEX予約等インターネット予約の台頭によって、「とりあえず最終列車」を抑えておいて、直前に変更するという運用をされやすい列車でもある。
とはいえ、のぞみ64号に関しては実際の乗車率も非常に高く、繁忙期ともなれば自由席デッキにも乗客が収まりきらず、指定席の通路やデッキに押し込まれるほどの混雑ぶりである。しかし、他の区間。例えば東京始発の最終列車などはさほど混雑は話題とはならない。これには「のぞみ64号」が次のような悪条件を満たしているからだと推測される。

悪条件1:博多から直通してくる列車である

東海道・山陽新幹線を走るのぞみ号には、大きく分けて以下の3つの系統で運行されている。

  • 系統1(博多のぞみ):東京~博多
  • 系統2(広島のぞみ):東京~広島
  • 系統3(新大阪のぞみ):東京~新大阪

このうち最も長距離となる東京~博多間を運行する「博多のぞみ」は、特に需要が集中しやすい。理由として、のぞみ号の運転系統のうちもっとも本数が多いのが、「新大阪のぞみ」であり、山陽新幹線の区間に入ると本数は半分以下となる。このため山陽新幹線へ直通するのぞみ号には、需要が集中しやすい。
のぞみ64号は、運行系統が山陽新幹線から直通する列車のうち最も混雑する「博多のぞみ」系統であり、停車する全ての駅から東京への最終列車となる。また、直接的に停車することがなくとも、停車駅である広島や岡山でぞみ64号に接続できるように接続列車のダイヤが組まれているため、特に利用が集中しやすい状態となっている。

悪条件2:東京・品川・新横浜の3大ターミナル駅への最終列車

二つ目の理由として、東京・品川・新横浜という首都圏側のターミナル3駅の最終列車ということである。
まず東京駅だけでも1日の東海道新幹線利用客数は相当のものであり、首都圏の鉄道の最終列車ものぞみ64号を考慮して列車の接続を行っている。東京駅以外の品川・新横浜においても東海道新幹線の利用客は非常に多いため、これら3駅に対する最終列車というだけで、のぞみ64号の負荷は非常に高い。

逆に首都圏からの始発列車はどうかというと、以下に時刻表を抜粋するが、こちらは東京・品川・新横浜のいずれの駅でも6:00発の関西への最速列車(のぞみ1号、のぞみ99号、ひかり533号もしくはのぞみ491号)を運転しており、始発の需要は各駅にかなり分散されている。このため、超繁忙期は別としても日常的に非常に混雑しているというわけではない。

悪条件3:前の列車との間隔が広い

以下の図はJR東海の新幹線時刻表から抜粋したものである。

赤枠で囲んだ部分にのぞみ198号とのぞみ64号が並んで掲載されており、新大阪駅ではこれら2列車が続けて発車する列車であることを表している。新大阪駅での両列車の間隔は9分あり、過密ダイヤの東海道新幹線においては、比較的長めの列車間隔である。

少し前の時間帯に目をやると、20:24ののぞみ472号、20:27ののぞみ474号は僅か3分で続行運転をしている。もちろん毎日運転ではないのだが、輸送力を見て需要が見込まれる日にはどちらの列車も設定し、3分間隔での運転ができるということだ。一方で、のぞみ198号とのぞみ64号の間に列車はいない。この間に臨時列車を設定することはできないということだ。何故そのようなダイヤとなっているかといえば、のぞみ64号の異常なまでの速達性が挙げられるだろう。

博多駅を18時59分に出発するのぞみ64号の1本前の列車は、18時42分に出発するのぞみ198号である。その差は17分もあるが、新大阪への到着時刻はのぞみ198号が21時13分、のぞみ64号が21時20分とわずか7分差まで縮まる。その後、名古屋到着時には差が6分に縮まる。のぞみ64号が「東海道・山陽最速列車」であるために前を走るのぞみ198号を猛烈に追いかけるので、その間に列車を挟むことができないのだと思われる。とはいえ、東海道新幹線は最短3分間隔でのぞみ号を運転しているし、新大阪以東は追い上げが弱くなりのぞみ198号とほぼ同じ所要時間で走る(のぞみ198号が必死に逃げているということもあるが)ため、全く増発の余地がないかと言われれば疑問ではあるが。

他の最終列車との比較

続けて、のぞみ64号と比較するため、逆の下り方向の最終列車はどうなっているのだろうか。

東京発博多行きの最終列車と、東京発新大阪行きの最終列車を例として説明する。

東京発博多行き のぞみ59号

まず1本目は、博多への最終列車である「のぞみ59号」だ。時刻表を見てもらうとわかるように、需要の多い日には18:48に臨時のぞみ449号(新大阪行き)が設定されているため、繁忙期であっても新大阪までの需要はこの臨時のぞみが吸収してくれるはずだし、そもそも首都圏から新幹線で博多へはおよそ5時間かかるため、そこまで需要は大きくない。また、広島や岡山への最終列車はまだこの後に走っているため、のぞみ59号が最終列車ではない。

東京発新大阪行き のぞみ265号

続いて、東京発新大阪行きの最終列車であるのぞみ265号はどうか。のぞみ64号が新大阪駅を21:24に出発するのに対し、のぞみ265号は東京駅を21:24に出発する列車である。

時刻表を見ると、のぞみ265号の前に、21:21発ののぞみ483号(新大阪行き)が設定されている。この列車が繁忙期には設定されるため、のぞみ265号の混雑は分散される。また、新大阪までの間に名古屋という一大ターミナル駅があるが、こちらの最終列車は22:03のひかり669号である。また繁忙時にはのぞみ499号(名古屋行き)が設定されるため、名古屋までの乗客にとっては、のぞみ265号は最終列車ではないため、これまた混雑は分散される。

のぞみ64号の混雑はどうしたら解決されるのか

のぞみ64号は、首都圏への最終列車であり、諸々の条件によってかなりの混雑ぶりを発揮する列車となってしまっている。これはここまで説明した通りだが、ではどうすればこの問題は解決するのだろうか。

キャパシティが足らないのだから増発するしかない

のぞみ64号の負荷を減らすためには、繁忙期だけでもまず列車を増発する必要があるだろう。しかも山陽新幹線から直通する列車ではなく、新大阪駅を始発とする列車が望ましい。そうすることで山陽新幹線からの乗客はのぞみ64号を利用でき、東海道新幹線区間から乗車する乗客は新大阪駅始発の列車を使うことができる。

増発する新大阪駅発の列車は、可能であればのぞみ64号の後続に設定することが望ましい。しかし、新幹線の営業列車は24:00までしか運転することができない。のぞみ64号の東京到着は23:45なので、単純に考えてのぞみ64号の発車時刻21:24の14分後までは列車を設定できることになる。

例えば21:30頃に新大阪始発の東京行き、または品川行きを設定することができれば新大阪駅でののぞみ64号も、現在ほど混雑することもないのではないだろうか。

しかし、きめ細やかなダイヤ設定をしているJR東海がここだけには手を付ける気配がない。利用者数としてかなり多いことは分かっているのだが、なんらかの理由でこのような列車を設定できないのかもしれない。

最終列車だけに集中しないよう利用する

少しでも旅先に長く滞在したいとか、そういう気持ちは十分にわかる。しかし、のぞみ64号の前の列車はたった9分前に発車するのだ。1本前の列車であれば指定席は取れるかもしれないし、仮に自由席に乗ることになっても、のぞみ64号よりは余裕があるはずだ。

このあたりは利用者側でうまく調整し、利用していくしかないのかもしれない。ただ、JR東海には切に、のぞみ64号の直後を走行する新大阪発東京行きののぞみを設定してほしいと個人的には思う。

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