- 「のぞみ」並みに速い「ひかり」がある!
- 「のぞみ」に抜かれない「ひかり」はどれ?
- 「ひかり」を使うメリット・デメリット
- 基本は2種類の「ひかり」の運行パターン
目次
新幹線の進歩はすごい。何といっても、東海道新幹線は最短3分間隔で、片道最大で毎時12本もののぞみ号が行き交っているのだ。むろん、毎日このようなダイヤとなっているわけではないものの、時速285キロで走る列車の3分後に同じ時速285キロで走る列車を走らせられるのは、世界広しとはいえ、新幹線くらいだろう。それぐらい過密に列車を走らせているのに、まだ座席の供給数や、潜在的な需要を考えたら列車の本数が足りないらしい。
事実、朝晩ののぞみ号なんてビジネスマンでいっぱいだ。朝であれば、みんな朝一の会議に向かったり、夕方から夜であれば、一仕事終えて帰路に就くところなのだろう。
一方、ひかり号といえば、幾分ビジネス色が和らぐ。ビジネス利用の主軸は、東名阪の移動だから、そのメイン列車となれないひかり号でそうなるのは、ある意味当然かもしれない。決してビジネスマンがいないわけでは無いが、絶対数が違いすぎるのだ。
ひかり号は、東海道山陽新幹線において、主にのぞみ号が停車しない駅に対して速達サービスを提供する列車である。そのような性質のため、主に東名阪を飛び回るビジネスマンは、「のぞみ号」を使う。
今ではエクスプレス予約などのネット予約サービスや、それに付随する割引も多くあるため、一昔前まであった、「経費精算はひかり号利用しか認めない」といったしょうもない制約もかなり減ってきたのだろう。
よって、出張時には皆が皆、エクスプレス予約でのぞみ号を予約するため、ひかり号には目もくれないというのが現状だ。
ただ、ひかり号と言っても、その実態は驚くほど多彩である。代表的なのは、新横浜駅を朝6時ちょうどに出る「ひかり533号」だろう。
このひかり号は、すぐ後ろの品川駅を6時に発車する「のぞみ79号」から、山陽新幹線の西明石駅まで逃げ切るのだ。所要時間は、新横浜〜新大阪が2時間12分。後続ののぞみ号の2時間4分や5分という所要時間にはとても敵わないが、特筆すべきはこの列車、小田原と静岡に停車した上でこの時間なのだ。
朝イチの時間帯を過ぎると、のぞみ号の所要時間は概ね2時間10分台になる。それを考えると、このひかり533号こそが、最新鋭のN700系の性能を最も活用している列車といっても過言ではない。
ただ、この列車が速いということは、新幹線について少し知識があれば。いや、それほど知識がなくとも大体知っているだろう。なんせ一番列車だし、後続に抜かされることもないので、「始発」を指定して乗り換え検索をすれば、一番手で表示される列車だろう。
日中の話に目を移すと、ひかり号は1時間に2本走っており、それぞれ停車駅のパターンが異なっている。
全列車停車
↓約7分
全列車停車
↓約10分
全列車停車
↓熱海まで 約20分
↓三島まで 約24分
2時間に1本程度停車(三島と隔時停車)
↓静岡まで 約22分
2時間に1本程度停車(熱海と隔時停車)
↓静岡まで 約17分
1時間に1本程度停車
↓約19分
1時間に1本程度停車
↓約30分
全列車停車
↓約37分
全列車停車
↓約13分
全列車停車
↓約13分
全列車停車
以後、西明石、姫路、相生の各駅停車。
↓約60分
全列車停車
全列車停車
↓約7分
全列車停車
↓約10分
全列車停車
↓小田原まで 約15分
↓豊橋まで 約65分
2時間に1本程度停車(豊橋と隔時停車)
↓名古屋まで 約70分
2時間に1本程度停車(小田原と隔時停車)
↓名古屋まで 約20分
全列車停車
↓約9分
1時間に1本程度停車
↓約14分
1時間に1本程度停車
↓約20分
全列車停車
↓約13分
全列車停車
2本のひかり号で、中堅クラスの駅に対して1時間に1本もしくは2時間に1本程度のひかり号を確保しよう、という意図が見える。のぞみ号は飛行機のように点と点をぶっ飛ばすように結び、こだま号は各駅各駅のんびりと進んでいく。ひかり号は、のぞみを停めるほどではないけど、速達便が欲しい駅に都合よく設定できる、かゆいところに手が届く列車として設定されているのだ。
ひかり号が停車する駅は、こだま号より利便性の高いひかり号があることで新幹線の利便性は飛躍的に向上する。ただ、ひかり号に加えてのぞみ号が停車するような東名阪の各駅相互の利用でも、実は東名阪を飛び回るビジネスマンに嬉しい使い道が隠されている。
パターン1を見ると、静岡県内にこまめに停車して乗客を拾い集め、あとは京阪神まで一直線という意図が見える。
事実、浜松までは退避が多いものの、浜松を出てからは「のぞみ」と同等の停車駅である。つまり、浜松〜新大阪までは、のぞみと同じ使い方ができていた…のだが、2020年3月の「のぞみ12本化」ダイヤのあおりを食って、上り下りともに「京都」で後続の「のぞみ」を退避するようになり、「ひかり」ユーザーによっては改悪となってしまった。とはいえ、新大阪までの所要時間は3分程しか変わっていないので、あまり気にする必要はないのかもしれない。
浜松にはのぞみが停まらないが、次の名古屋は当然のぞみ停車駅である。名阪間の移動は、このパターンのひかり号でも、退避があるとはいえ、基本的にはのぞみと同じように利用できる。自由席も3両ではなく5両あるので、自由席利用にも便利である。
また、日中帯であれば、このひかり号は山陽新幹線の岡山まで行く。京都から岡山までは各駅停車となるため、岡山まで乗り通すつもりなら基本的には新神戸などどこかで乗り換えたほうが良さそうだが、名古屋から新神戸までといった利用では、のぞみ号よりも絶対に空いており、乗り換えも不要なため、有用だろう。
この記事では、下り方向について取り上げたが、上り方向でももちろん利用できる。
続いてパターン2を見てみよう。こちらは小田原からの名古屋、関西方面の利便性と、豊橋からの対東京を意識した列車だろう。ただ、両者とも2時間に1本しか停車しないため注意を要する。あとは米原に停車することで、福井方面への特急とも接続するダイヤになっている点も見逃せない。
東京対金沢の輸送であれば今は北陸新幹線になってしまったものの、福井県内、特に敦賀など南部の方では東海道新幹線経由がまだまだ優位である。
岐阜羽島への停車は、名古屋以西でこだまが毎時1本になることの救済と思われるが、この救済により、岐阜羽島駅は毎時1本、速達列車で東京まで行ける駅なのだ。これは豊橋や小田原よりも利便性が高いということ。岐阜県にはもう少し頑張ってほしいようにも思う。
さて、このパターン2の「ひかり号」で特筆すべきは、東京〜名古屋間で無退避なのである。途中豊橋か小田原に停車するが、退避はない。つまり、さきほどのパターン1のように、東京〜名古屋間では、のぞみと同じように使うことができるのだ。実質、名古屋~東京間は、のぞみ13本ダイヤと等しい。さらに、自由席が5両あるため、自由席利用者にも嬉しいところである。こんな記事を書いたら名古屋や東京からの利用が増えて、豊橋市民や小田原市民の自由席利用者の方から反感を買ってしまうかもしれない。否、利用客が増えたと判断されれば、2時間に1本から1時間に1本停車ダイヤに昇格できるかもしれない。要は考えようだ。
そして、ひかり号を使うことで、いくつかメリットがある。まずは昔ながらのの窓口できっぷを買う場合、指定席なら当然、のぞみ料金レスである。最低でも210円がこれで浮くので、ドリンクでも買うのがいいだろう。
次に、エクスプレス予約やスマート会員向けの話になるが、区間によってはひかり号なので、3日前までの予約で格安でグリーン車に乗車できる、EXグリーン早特の対象となる。名古屋〜東京間の話ではあるが、普通車の料金に1000円強の追加でグリーン車に乗れるのは画期的だ。しかも、のぞみ号とほとんど変わらない速さの列車を。である。
逆に、のぞみ号の普通車のみが対象のEX早特21の対象とはならないので、そこは注意する必要がある。
ここまで持ち上げておいたにも関わらず、あえてひかり号を使う上で、一点だけ注意がある。それはひかり号が「ジャパンレールパス」の対象であるということだ。
ジャパンレールパスとは、訪日外国人向けにJR線が乗り放題となる乗車券で、もちろん日本では販売していないので、この記事をご覧になっている方にはあまり関係のない商品である。
このジャパンレールパス、実はのぞみ号に乗車することができないのだ。つまりどういうことか。訪日観光客の多くが、ジャパンレールパスが使え、かつ速いひかり号を選択するのだ。むろん、私が外国人ならそうするだろう。旅行の限られた時間で、のんびりこだま号で京都まで行くかと言われたら、多分しないだろう。
多くの外国人の方がマナーを守って旅行されているのだが、旅の恥はかき捨てと言わんばかりに、大声で喋り続ける人がいるのも、また事実である。サラリーマンだらけののぞみ号であれば、夕方から夜遅くにかけてのお酒が進みがちの時間を除いて、あまり騒がしくはないのだが、ひかり号を選んだ場合、騒がしい車両に遭遇するリスクが高まることだけは承知しておこう。
決して外国人はうるさい、日本人は静かというわけではない。夜になると出張帰りでたがが外れて馬鹿騒ぎしている連中を見ることがあるが、私は新幹線で酒盛りして騒いでいる人間は例外なく嫌いだ。そういった人間が、自分の行動を顧みることができずに子供の泣き声がうるさいなどと非難していたりするのだから面白いのだが。
このように、一口にひかり号とは言っても、一言で言い表せないほど停車駅や活用の仕方など奥が深い。特に、後続に抜かれない「ひかり」は、「のぞみ」よりも2両多い自由席を有効に使えたり、指定席でも「のぞみ料金」がかからないといったメリットが大きい。記事中で述べたようなメリット・デメリットを考慮したうえで時間が合えば、ぜひ時刻表と睨めっこしたうえで、ひかり号の利用も検討してみてほしい。いつもの味気ない「のぞみ号」とは、違う風景が楽しめるかもしれない。
今回は東海道新幹線の列車に触れてみたが、山陽新幹線に係るひかり号も、本数は少ないが非常に個性的な列車が走っている。機会があれば、次回はそちらにも触れてみようと思う。
8/19 山陽新幹線の「ひかり」に関する記事を以下に公開しています。