トヨタ自動車が誇るフラッグシップミニバン「アルファード」は、ベースグレードの価格帯が300万円台後半からと、かなりお高い設定となっているが、その充実した装備などから大人気となっており、年間販売台数でもコンパクトカーと肩を並べるほどである。一方でグレードが乱立しており、2021年5月の一部改良でだいぶ整理されたとはいえ、現行型にはまだまだ10以上ものグレードが存在している。
しかし、高額な買い物であることに間違いはなく、出来ることならお得に購入することを考えたいもの。今回はこの現行型アルファード(30後期型)について、次の乗り換えやライフスタイルを考慮の上、高年式の中古車まで含めた買い方について紹介してみようと思う。
目次
本題の前に、アルファードのグレードについて紹介する。アルファード30後期のグレードは、既に廃止されたものを含めると以下の通りとなる。一部改良によるグレード廃止前はなんと18ものグレードが存在していた。
とはいえ、18グレードそれぞれが全く異なるというわけではなく、ボディタイプが「標準タイプ」か「エアロタイプ」かで大別され、その先で内装や装備のランクが最高~低まで4ランクに分かれ、それぞれのランクの中に「ハイブリッド車」か「ガソリン車」がいるといった格好である。
つまり、純粋に装備の差で分けていけばグレードとしては4ランクしか無いようなものと考えてもよい。あとはパワートレインやエアロの有無など、好みの問題となる。
ちなみに車体外装は標準タイプ、エアロタイプのみ差があり、同一タイプ内において車体は全く同じである。
一部エンブレム等の加飾は異なるが、例えば標準タイプであれば最高グレードのエグゼクティブラウンジであろうがXグレードと車体は全く変わらない。
標準タイプ、エアロタイプでそれぞれ以下の表のようなグレード構成になっている。
前項でも説明した通り、ボディタイプがエアロパーツ付きか、そうでないかで大別でき、その中には内装(装備)のグレードが4種類あると考えてよい。ただ、例外としてエアロボディの場合は、特別仕様車である「Sタイプゴールド」が存在している。これはエアロボディにおけるベースグレード(Sグレード)を基本としたグレードだが、装備がSグレードよりも充実していることから、低寄りの中グレードという扱いとした。


また、2021年5月に廃番となったグレードが4種類あるが、3種類がハイブリッドである。アルファードクラスになると、ハイブリッドとはいえ燃費は悪く、本体価格も非ハイブリッドの同グレードと比較しておよそ80万円程度の上がり幅となるので、新車の売れ行きは悪かったものと思われる。
こうして見ると、中間グレードに廃止されたグレードが多く見られる。これは恐らく同一の価格帯に、「S “C”パッケージ」という超売れ筋グレードがいたことが一つの原因かと思われる。特に、ガソリンモデルで唯一廃止グレードとなってしまったGグレードは、S”C”パッケージとの価格差がほんの僅かに安いだけであるにもかかわらず、2列目シートに大きな差を付けられてしまったことも、売れ行きの悪さに拍車をかけたのだろう。
このため、どうしてもGグレードが良いという理由がなければ、同じような価格で装備の良いS”C”パッケージを選択する人が多かったものと思われる。
先ほどの表をもとに、内装ランクごとにどのような装備があるのかを、別の表にしてみたのが以下の表である。

最高ランクは何でもあり、至れり尽くせりである。これを選べる人は迷うことなくこれを選べば良いだろう。それ以下は必要に応じてグレードを選ぶことになるが、基本的にここに書かれているものは、オプションとしてすら選択することはできない。
例えば、ベースグレードのシート素材は必ずファブリックであり、オプションで合皮などにすることはできない。その逆も然りである。よって、どうしても欲しい装備がある場合は、その装備が設定されているグレードを必然的に選択する必要がある。
アルファードは2015年に30系となって以来、2018年のマイナーチェンジを挟んでおよそ7年間フルモデルチェンジされていない。また、マイナーチェンジしてからも3年以上経つので、フルモデルチェンジは早ければ2023年とも予測されている。
フルモデルチェンジの情報が正式に出ると、中古車価格や買取価格にも今と大きく差が出ることが考えられるので、近いうちに売却することを考えている方は、購入にあたって十分に考慮した方がよいだろう。
ただし、新型が発売されると、安全装備の追加など、同一グレードでも軒並み価格が上がることが想定される。それでも新型が欲しいのか、それなら現行型にするのかは考慮すべきだろう。
結論から言うと、「人による」としか言えず、一概にお買い得グレードを挙げることは難しい。
一般的にアルファードはファミリーユースが多いと考えられるので、その観点は当然含めたうえで、クルマを資産として考えたときに、いくつかお買い得なグレードをピックアップする。
新車を乗り継ぎたいなどの理由で短期での買い替えを狙う場合、新車購入後、最初の車検を迎える3年以内でクルマの売却を検討することが多いだろう。この場合は、売却額(リセールバリュー)が高ければ高いほど、次の乗り換えに要する金額が少なくて済むため、基本的には人気のあるグレードを狙って購入する必要がある。
人気のあるグレードとは、「S”C”パッケージ」一択だ。
なぜ、このグレードにそこまで人気があるかといえば、アルファードの場合、海外での人気が国内よりも高く、特にこのS”C”パッケージというグレードは装備の豪華さやメンテナンスの容易なガソリンエンジンであることから、海外で非常に人気が高く、売却されたクルマは海外に輸出されることが多い。
さらに、人気のS”C”パッケージであることに加えて、オプション(メーカーオプション)にも、海外での需要にあわせた輸出仕様とまで言われる鉄板の組み合わせがあることでも知られている。
メーカーオプションは契約後は変更できず、そのオプションがついていないことで売却時の査定額がオプション金額以上に大幅に下がることもあるため、短期売却する場合で買い取り額を最大にしたい場合は、自分には不要かもしれないがメーカーオプションを付けるという選択肢も重要になってくる。
「鉄板のメーカーオプション」は以下のとおりである。
- ツインムーンルーフ
- デジタルインナーミラー
- スペアタイヤ
- 三眼ヘッドライト※現在はS”C”パッケージに標準装備
また、輸出に限らず、国内で利用する場合でも、装備が非常に充実していることも人気の理由だろう。
数ある豪華装備のうち、シートベンチレーション、シートヒーター、ステアリングヒーター、大型センターコンソール、2列目のエグゼクティブパワーシートは、このグレード以上のグレードにしか装備されないため、非常に買い得感があるのも特徴であるが、車両本体価格はおよそ470万円となる。一般的にはかなり高価なクルマだと言わざるを得ない。
小さい子どもがいる場合、アルファードはとても便利なクルマである。しかし、子どもは必ずと言っていいほど、クルマを汚す。食べカス、ジュースに始まり、泥だらけの靴や服で乗り込むこともあるだろう。小さい子連れのファミリーには、ベースグレードのXグレードが人気となりそうだが、Xグレードはシートがベージュのファブリックシートである。このため、汚れが非常に目立ちやすいのが悩みどころだ。
ベージュのファブリックシートが嫌な場合、シートがブラックとなるエアログレードを検討することになるが、その場合は、エアログレードのベースとなるSグレードは、可能な限り避けた方が無難である。
Sグレードと、1つ上のSタイプゴールドとの差額はおよそ30万円だが、シート素材がファブリックからウルトラスエード&合皮のシートとなり、センターコンソール等の内装も1ランクアップしている。また、個人的に大きいのが外装で、シーケンシャルウィンカー、コーナリングライト、デイライト、アダプティブハイビームを備えた3眼ヘッドライトが標準で装備されている。
また、上位には先ほどの「 S”C”パッケージ 」があるが、ファミリーユース。特に小さな子どもがいる場合、 S”C”パッケージ の2列目シートであるエグゼクティブパワーシートはかなり扱いづらい。チャイルドシートを使わないくらいの年齢であれば良いが、子どもが小さいうちは、シートアレンジのしやすいタイプゴールドのキャプテンシートのほうがお勧めである。また、 S”C”パッケージ と比較すると、本体価格430万円と、だいたい40万円安くなる点も注目だ。
このことから、ベースグレードに追加で30万円程度上乗せすることで、所有欲を大きく満たすクルマにすることができる。予算に余裕があるのであれば、ぜひSタイプゴールドをお勧めしたい。仮に売却する場合でも、 S”C”パッケージ ほどではないがリセールバリューも見込める。
新車で価格を最も抑えるのであれば、やはりベースグレードのXグレードしかない。見た目や内装に大きな期待はせずに、多人数乗車や積載性など、ミニバンとしての機能を満たすことだけを求めるのであればXグレードで十分と考えることもできる。
もちろん、ベースグレードと言っても、必要な装備は概ね付いているので安心だ。お子さんのいる家庭であれば、両側パワースライドドアは必須だと思われるが、2022年時点で新車を買うのであれば、標準装備となっている。
先ほどのSタイプゴールドと比べると、車両本体価格はおよそ360万円で、だいたい70万円ほど安い。内装の質感は多少チープさを感じることもあるが、機能としては十分なものが提供される。また、ベースグレードとはいえ、リセール価格もさすがはアルファードということで、高い水準である。
最後に、新車ではないがアルファードには「中古車という選択肢」もある。
結論からいえば、私は中古でハイブリッドGを購入した。これについては後に記事にしようと考えている。
日本では家とクルマは新築と新車の信仰が根強く、新車に付加価値を求める人がかなり多い。
もちろん、中古車ということは経年や利用に応じて劣化している部分はあるだろうが、クルマの品質というものは一昔前と比べて大きく上がっていて、例え10年10万キロを超えたところで、定期的なメンテナンスを欠かさなければ一般的に壊れる事は無い。
もちろん、メンテナンスされていたかどうかは重要だが、点検整備記録簿からある程度判断することはできるし、中古車を買う先が信頼できる。例えば長く付き合っているお店や、大手自動車メーカーの看板を掲げているディーラーなどであれば、粗悪なクルマを販売すれば信用問題にもつながるため、よほど問題にはならないだろう。
要は、完全に新品ではなくとも、そこそこ状態がいいもので妥協できるのであれば、現行30系アルファードの中古車はそれこそ星の数ほど転がっているということだ。
しかし、ここ最近の半導体不足によって納期が大幅に遅れていることから、即納できる中古車人気が高まっており、S”C”パッケージに代表されるような「人気グレード」は、あまり値落ちしない。ここで目を付けるべきところが「不人気グレード」である。
冒頭に、現行のグレード一覧をお見せしたのを覚えているだろうか。その中で、2020年に廃番となってしまったグレードもあるということをお伝えしたが、まさにその「廃番になるようなグレード」というのは、基本的に不人気なグレードである。こういった車は、過熱する中古車市場でも値段が落ち着いている可能性が高い。
アルファードの「不人気グレード」を見極めるポイントは以下の3点である。
- 標準ボディ(非エアロボディのX,G,GF等)
- ハイブリッド
- 人気メーカーオプションの有無(サンルーフ、三眼ヘッドライト等)
標準ボディはやはり見た目がエアロボディほどスタイリッシュではなく、ベースグレードと同じ顔付きということもあってなのか、あまり人気が無い。
また、ハイブリッドが不人気なのが意外であるが、アルファードクラスになるとハイブリッドでも燃費は伸びにくい点と、海外輸出の際には東南アジアでの主流であるガソリン車が好まれるという都合もあり、中古車需要が少ないという点から、不人気となっているものと思われる。
また、グレードに限った話ではないが、人気のあるメーカーオプションが付いていない場合、値段は落ちる傾向にある。将来的に乗りつぶす予定であって、自分にとっても不要なオプションであれば、ついていなくても構わないだろう。
私の購入した「ハイブリッドG」は、まさにこのどちらの特徴も備えており、かつメーカーオプションもあまり需要の無い付け方がされていたため、新車当時の価格から優に100万円を超える値落ちとなっていた。
しかし、裏を返せば、自分が売るときには「需要がない」ということになる。
私の場合、クルマの買い替えはそこまで積極的にしたいとも思えず、子どもが成長するまでこの車の乗り続けると考えたので、さほど売却することは考えずに、機能性や快適性、そしてハイブリッドに惹かれて購入を決断した。
買う人の状況は人によってまちまちなので、自分のライフステージや何を重視したいのかを慎重に検討したうえで、アルファードは購入する必要があるだろう。
この記事が何かの参考になれば幸いだ。